
製造業を取り巻くIT課題は、年々複雑かつ深刻なものとなっています。DX化によって解決できる課題が数多くある一方で、「何から着手すべきかわからない」「過去に取り組んだがうまくいかなかった」といった理由から、抜本的な対策を先送りにしている企業も少なくありません。
そこで本コラムでは、膨大なIT運用コストやセキュリティリスクに直面していた、ある製造業A社の取り組みをケーススタディとしてご紹介します。同社はアルゴグラフィックスの支援のもと、課題が山積する自社のIT環境を、「VDI(デスクトップ仮想化)」とNVIDIA社の「vGPU(仮想GPU)」を基盤とした最新インフラへ刷新。さらに、その運用を支える「マネージドサービス」を活用し、次世代のものづくり環境を実現しました。こうした改革を成功に導いた、具体的な解決策について解説します。
A社の企業概要と直面していた5つの課題
業種:製造業
PC / ワークステーション規模:数千台
課題:A社では事業拡大に伴い、ITインフラの運用工数とコストが限界に達し、セキュリティ面にも大きな不安を抱えていました。主な課題を整理します。
課題1 OSやソフトウェアのバージョンアップ工数の増大
数千台規模の業務用PCを運用するA社では、OSやソフトウェアのアップデート作業が大きな負担になっていました。
事前テストを含め、全端末の更新には長期にわたる作業が必要で、「常に最新の環境を維持すること」は物理的に不可能な状況に陥っていました。
課題2 ランサムウェア感染時の業務停止リスク
ランサムウェアをはじめとするセキュリティリスクへの対策も、早急に解決すべき重要な課題でした。端末は各地の拠点に分散し、設定環境も1台1台異なるため、バックアップ管理には多大な労力を要します。
ランサムウェアに感染すれば、復旧にかかる時間はOSのバージョンアップと同程度、またはそれ以上と想定され、業務停止期間は数カ月に及ぶ恐れもあります。これまで「うちだけは大丈夫だろう」「今実施している対策で十分だろう」と考えていたA社ですが、大手企業が次々と被害にあう現状を前に危機感は高まるばかりでした。
課題3 一律スペックのPC配布による限界
A社では、導入コストや管理工数の観点から、全社員に同スペックのPCを配布しています。
しかし近年、設計部門では、CADやグラフィック処理に加えて、各種シミュレーションなどを必要とする機会が増加。従来のPCスペックでは「動作が遅い」「動かない」といった不満が噴出し、別途PCを追加購入して対応していました。一方、他部門では従来のPCでも性能を持て余すケースがあり、「現場の生産性維持と全社的なコスト最適化を両立できない」というジレンマを抱えていました。
課題4 挑戦を阻む環境での機会損失リスク
PCのスペック不足問題は、「新しい技術に挑戦できない」という機会損失も生んでいました。
AIや解析、デジタルツインといった最新技術を活用したくても、それを支えるインフラ環境がないために試すことも利用することもできず、「競合他社に後れをとっている」との焦りがありました。
課題5 IT運用の属人化と人材不足、ノウハウのブラックボックス化
さまざまなIT課題に対応する必要性を感じていたA社ですが、情報システム部門は慢性的に人材不足で、万が一ランサムウェア感染のような事態が起こった場合も、対応に遅れが生じるリスクがありました。
また、設計部門のシステム環境は、情報システム部とは切り離して、設計部門で管理しています。このため知見やスキルが属人化しており、「担当者の異動時や退職時に引き継ぎが難しく、システムがブラックボックス化してしまう」という点も大きな不安でした。
アルゴグラフィックスの提案「VDI(仮想デスクトップ基盤)」の導入
A社の課題を根本から解決するため、アルゴグラフィックスは「VDI(Virtual Desktop Infrastructure)」の導入を提案しました。
VDIは、PCで実行するデスクトップ環境をサーバー上に仮想化して集約する技術です。ユーザーは、手元の端末からネットワーク経由でリモートのサーバー上で稼働する仮想デスクトップへアクセスし、操作した画面更新の差分イメージのみが手元の端末に送られてきて利用ができます。

VDIの導入によって、A社は以下の課題を解決することができました。
VDIで解決! 課題1 OSやソフトウェアのバージョンアップ工数の増大
VDIの大きな利点は、デスクトップ環境の運用をデータセンター内のサーバー上で集中管理できる点にあります。
OSやソフトウェアのバージョンアップの際も、「マスターイメージ(ひな形となる仮想デスクトップ)」を更新するだけで、全ユーザーに最新の環境を適用できます。
これにより、バージョンアップに要していた時間と工数が大幅に削減され、適用漏れやバージョン違いによる不具合を防ぐこともできるようになりました。

VDIで解決! 課題2 ランサムウェア感染時の業務停止リスク
VDIでは、バックアップデータもデータセンター内のサーバー上で集中管理されます。このため、万が一ランサムウェアに感染しても、バックアップデータから全ユーザーの環境を即座に復旧できるようになりました。
サーバー攻撃を受けた際、製造業において重要事項の1つとしては、「生産を止めない」ことが挙げられます。原因究明や再発防止の取り組みは重要ですが、まずは業務への影響を最小限に抑え、速やかに業務を再開できる体制を整えておくことが求められます。そのためには、「緊急時にどれだけ業務復旧を早められるか」を事前に検討しておくことが重要です。この備えは、自然災害の発生時にも、事業継続を支える強固な基盤となります。
VDIによる迅速な復旧体制を構築したことで、A社は長年抱えていた緊急時対応における懸念を払しょくすることができました。
アルゴグラフィックスの提案「vGPU(仮想GPU)」の導入
アルゴグラフィックスが、VDIとあわせて導入を提案したのがNVIDIA社の「vGPU」です。
GPU(Graphics Processing Unit)は、並列計算処理に特化したプロセッサで、大量のデータを一度に処理できるため、高度な3D CADや映像などの画像描写やCAEやHPCなどの解析、AI推論や学習などに欠かせない存在となっています。「vGPU」は、このGPUのメモリを仮想的に分割し、高いコア性能を複数台の仮想マシンで共有しながら利用できるNVIDIA社の技術です。コストを抑えて、多くの仮想マシンでGPUを利用できるようになります。

vGPUの導入によって、A社は以下の問題を解決することができました。
vGPUで解決! 課題3 一律スペックのPC配布による限界
vGPUを活用すれば、GPUリソースを、ユーザーのニーズに合わせて柔軟に割り振ることができます。A社では、各部署や各ユーザーの業務に合わせ、「CADや解析に特化した高性能環境」や「事務作業に適した標準環境」を構築しました。
これにより、コストを抑えながら、高度な作業環境を必要とするユーザーのニーズに対応可能となり、IT投資効果を最大限に引き出せるようになりました。

vGPUで解決! 課題4 挑戦を阻む環境での機会損失リスク
vGPUの導入によって、「CPUのみの一般PCではスペック不足だが、高価なGPU搭載ワークステーションは一部のユーザーしか使えない」という不均衡も解消できました。
誰もが必要なときにGPUの高い処理能力を利用できるようになった結果、デジタルツインなどの新技術の試用や活用が活発化。積極的なテクノロジー活用は、製品設計の精度向上や開発期間の短縮に直結し、最終的には、製品そのものの「付加価値」を高めるという大きな成果をもたらしています。

アルゴグラフィックスの支援 マネージドサービスの提供
さらにアルゴグラフィックスは、人材不足や業務の属人化の解決策として、「マネージドサービス」を提案しました。
マネージドサービスとは、企業が自社のITインフラ(サーバー、ネットワークなど)の運用・管理・保守を外部の専門業者に委託するサービスです。
アルゴグラフィックスのマネージドサービスには、次の3つの特長があります。
1. 製造業の知見を生かした最適なシステム構築
アルゴグラフィックスは、製造業に特化したSIerです。深い業界知識と専門性を持つ「テクニカル・ソリューション・プロバイダー」として、単なる製品販売や、運用支援にとどまらず、ハードウェア、ソフトウェア、サポートサービスなどを組み合わせ、ものづくりのプロセス全体を最適化するワンストップサービスを提供しています。製造業の複雑な課題を熟知し、現場のワークフローに即したシステムを構築できる点は、当社ならではの強みとして、多くのお客様に評価いただいています。
2. マルチベンダーとしての柔軟な提案力
アルゴグラフィックスは、特定のメーカーに縛られない「マルチベンダー SIer」でもあります。このため、豊富な選択肢の中からお客様の課題に最適な製品を組み合わせ、柔軟にシステム環境をデザインすることができます。また、自社データセンターを保有しているため、お客様専用のITインフラ環境構築から、要件に合わせたハードウェアリソースの提供まで、幅広く対応可能です。
3. 高度なGPU技術までカバーする専門性
マネージドサービスを提供しているSIerでも、GPUまで対応範囲に含むケースは非常にまれです。アルゴグラフィックスは、長年にわたり製造業のお客様を支援する中で、CADやPLM、CAEやHPC、AIなどでGPUを必要とする現場において、豊富な実績を積み重ねてきました。その知見を生かし、高度な専門性を要するGPUの安定稼働や最適化まで一貫してサポートしています。
A社はアルゴグラフィックスのマネージドサービスを通じて、VDIとvGPUを基盤とした高度なITインフラを実現しました。運用フェーズにおいても、利用状況に即した柔軟な最適化を図ることで、現場の業務を止めることなくスムーズな環境刷新を成功させています。
この刷新により、A社の情報システム部門や、設計部門のIT担当者は、ITインフラの日常業務から解放され、「競争力を高めるIT活用戦略」や「新製品の企画・開発」といった、より付加価値の高い業務に専念できるようになりました。最新技術を存分に活用できる環境は、製品開発や品質向上への強力な後押しとなっています。
まとめ
以上のようにA社では、VDIとvGPU、そしてマネージドサービスを活用したITインフラの刷新によって、長年の懸念事項であった運用負荷やセキュリティリスクを解消し、さらなる事業成長に向けてDXを加速させています。
アルゴグラフィックスは、日本国内におけるNVIDIA上位クラスのパートナーとして、数多くの製造業DXを支援してきました。もし本ケーススタディでご紹介したような課題を抱えながら、「解決策がわからない」「人材不足で対策を打てない」とお悩みでしたら、ぜひ一度当社にご相談ください。貴社の課題に寄り添い、現状の最適化から将来を見据えた環境整備まで、幅広くご支援いたします。
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