
近年、製造業を取り巻く環境は激しく変化しており、特に多品種少量生産や一品一様の製品開発を行う企業においては、従来の生産体制では対応しきれない複雑な課題に直面しています。
本記事では、こうした製造業が直面する具体的な課題と、その解決策として不可欠な「部品表連携」と「工程設計」のデジタル化の重要性と効果、そしてそれを実現する具体的なソリューションを、事例を交えて詳しく解説します。
多品種少量・一品一様の製造業が直面する課題と対策
大量生産ではなく多品種少量、一品一様の製品を生産する場合、各製品の組み合わせによる膨大な情報が存在します。そして多くの場合、それらの情報が適切に管理されていないことが、多くの課題につながっています。
部品表情報の属人化と管理の困難さ
一品一様で製品種類が多いが故に、製品情報の管理が困難となっています。特に、製品の仕様や組み合わせルール、BOM(部品表)の情報が担当者個人の知識に依存し、属人化しているケースが非常に多く見られます。昨今の人口減少による人手不足が進む中、この属人化は大きなリスクとなり、最終的には生産対応できなくなるといった事態も発生し得ると予想されます。
設計情報と製造情報の断絶
各部門が利用するサイロ化された情報保管庫から、生産部門など第三者が正しい情報を見つけ出すことは、非常に困難です。たまたま見つけ出した情報が最適な情報でなかったという場合もあり、これが流用性や品質担保の面で大きな課題です。特に設計部品表(EBOM)と製造部品表(MBOM)がシステム的に連携されておらず、設計変更時の対応漏れや対応時間の遅延につながっています。
非効率な工程設計と手戻りの発生
設計段階で製造要件が十分に考慮されない場合、出図後に製造要件による大幅な手戻りが発生するリスクが高まります。また、プロダクト(製品)・プロセス(工程)・リソース(設備)の情報をデジタルで一元管理できていないため、製造計画の確認に時間がかかり、非効率です。これにより、試作回数の増加やリードタイムの長期化を招きます。
開発スピードの遅延と競争力低下
中国などを筆頭とした新興企業では、開発スピードが非常に速く、かつ品質の高い製品を生み出しています。このスピードに対応するためには、一品一様生産を行う国内企業においても設計開発のデジタル化を実現することで、設計効率を極限まで上げることが必須となっています。従来の設計製造プロセスでは、新興企業との競争に打ち勝つことが難しくなっています。
一品一様のものづくりメーカーにおけるデジタル化の取り組み事例
ここでは、当社が支援した設計開発のデジタル化事例をご紹介します。
市場のスピードに対応するべく、設計効率を極限まで高めるには、設計開発のデジタル化がもはや必須な状況です。また、従来型の設計~製造プロセスでは新興企業に打ち勝つことは難しく、プロセス改革も必要不可欠です。
設計部門のデジタル化
設計開発のデジタル化を急速に立ち上げることで間接工数の削減、人為的ミスによる品質低下の削減と、開発スピードUPを目指す企業が増えています。
弊社の支援事例では、サイロ化されたさまざまな情報保管庫から必要な情報を探し集め、レビュー対象者に展開するといった従来の非効率な検索工数や展開時のミスを削減するために情報保管庫を集約。3Dモデルなどの製品情報に関連ドキュメントを紐づけることで、間接工数の85%~90%削減を実現しました。

また、集約された情報保管庫を設計だけではなく生産部門とも共有することで早期に設計情報を共有することができ、製造要件の早期熟成も可能となりました。 ただし、これらの実現にはプロセスの改革が必要となります。それも、従来業務の延長線上ではなく、大幅な改善・効率化と、変革を推進しなければなりません。
3DEXPERIENCE PlatformによるものづくりDXの必要性
ここまで解説したさまざまな課題を解決し、多品種少量・一品一様の製造業におけるものづくりDX実現に最適なのが、ダッソー・システムズ社が提供する「3DEXPERIENCE Platform」です。このプラットフォームは、企画構想段階から設計、製造までの情報共有を効率化し、一気通貫のデータトレーサビリティを提供することで、ものづくりにおけるプロセス改革に貢献します。

3DEXPERIENCE Platformの活用メリットは、大きく以下の3点です。
情報の一元管理と検索性・流用性の向上
設計から製造情報までがデジタルデータとして一元管理でき、検索性、流用性の向上に寄与します。これにより、必要な情報を素早く見つけ出し、再利用することで、作業効率が大幅に向上します。
開発初期段階からの部門間情報共有
開発初期段階から設計と製造の各部門が情報共有することで、早期に製造要件を含む製品仕様の熟成が可能となり、製造要件による手戻りの削減にもつながります。
EBOMとMBOMのシステム連携
EBOMとMBOMがシステム的に連携されるため、設計変更時における対応漏れの削減や対応時間の削減にもつながります。
また、3DEXPERIENCE Platformでは、取り込んだ設計データをそのまま生産技術側で検討でき、形状変更による影響度も確認できます。それにより生産技術での検討結果を設計にそのままフィードバックを行い、課題情報を管理、修正対応工数の削減が可能になります。これらの機能は、開発プロセス全体のスピードアップと効率化を実現し、企業の競争力向上に貢献します。
ここからは、その中から「部品表連携」と「工程設計」のデジタル化に貢献する、3DEXPERIENCE Platform上で利用可能な主要なソリューションをご紹介します。
3DEXPERIENCE ENOVIA - 正確で効率的な部品表連携による課題解決
前述の通り多品種少量・一品一様の製造業では、製品情報の属人化や設計情報と製造情報の断絶が大きな課題となっています。3DEXPERIENCE ENOVIA はこれらの課題を解決し、正確で効率的な部品表連携を実現するソリューションです。

設計情報とBOMの自動連携による転記ミス削減
3DEXPERIENCEのCAD上でモデリングしたデータを、構成情報や品目情報とともにプラットフォームへ登録することで、品目情報が自動的に転記され、転記ミスを削減します。システム的にCADデータとEBOMの情報が関連付けられるため、設計変更が発生した場合、EBOMも自動的に更新され、設計者の対応工数を削減します。
情報の集約による効率的な検索と流用性向上
サイロ化されたさまざまな情報保管庫から必要な情報を探し集め、レビュー対象者に展開するといった非効率な検索工数や、展開時のミスを削減するために、情報保管庫を集約します。3Dモデルなどの製品情報に関連ドキュメントを紐付けることで、間接工数の85%から90%削減を実現した事例もあります。集約された情報保管庫を設計部門だけでなく生産部門とも共有することで、早期に設計情報を享受し、製造要件の早期熟成も可能になります。
EBOMからMBOMへのスムーズな移行とシステム連携
登録されたEBOMの情報と属性情報を用いて、MBOMを自動的に作成するツールを起動できます。CADデータが持つ構成情報や属性情報がMBOMツールにそのまま反映されるため、正確かつ効率的なMBOM作成を支援します。ENOVIAは、サプライチェーン、顧客、社内組織間のスムーズな情報連携を促進し、開発・製造プロセス全体の効率化を可能にします。
3DEXPERIENCE DELMIA - PPRモデルで実現する生産準備のフロントローディング
非効率な工程設計や手戻りの発生は、多品種少量・一品一様の製造業における共通の課題です。3DEXPERIENCE DELMIA は製造・生産準備フェーズにおけるデジタル化を支援し、特に工程設計においてその真価を発揮することで、これらの課題を解決します。

PPRモデルによる生産準備のフロントローディング
設計段階においてプロダクト(製品)、プロセス(工程)、リソース(設備)を核として、これらすべてをデジタルデータ化し、最終的な出図の前にMBOM、工程計画、設備検討を行います。このPPRモデルは、PLMシステム内でも工程の設備計画をフロントローディングさせて検討する上で、特に重要です。
製造計画の成立性検証と品質向上
モノを製造する前に、さまざまなシミュレーションツールにより製造計画の成立性を検証し、課題を設計部署とともに解決します。これにより、製品工程計画の品質を高めた上で、ERPと連携したり、あるいは工場の実行系の仕組みと連動します。この連続性がシステムレベルで担保されているのが、3DEXPERIENCE Platformの大きな特長です。
デジタルツインによる高度なシミュレーション
DELMIAは工場全体をデジタルツインとして再現し、生産ラインのレイアウト検討、作業手順の最適化、ロボットシミュレーション、人間工学に基づいた作業分析など、製造に関わるあらゆる側面を仮想空間で検証できます。これにより、試作回数の削減、リードタイムの短縮、製造品質の向上が実現可能です。
アルゴグラフィックスが提供する価値
アルゴグラフィックスは長年にわたりPLMソリューションをはじめとしたITソリューションを提供し、ものづくりに関わるすべてのお客様の付加価値創造に貢献してきたテクニカルソリューションプロバイダです。特にダッソー・システムズ社とのパートナー企業として強固なリレーションシップを持ち、グローバルにおいてもトップクラスの実績を誇ります。
豊富な実績と経験
大規模案件を含む豊富な実績と、設計現場の経験を持つコンサル部門が強みです。経営目線と現場目線の双方からアプローチすることで、お客様の課題に寄り添った最適なソリューションを提供します。
ワンストップソリューション
お客様の要望に合わせた適切な製品を提供するだけでなく、独自のサービスで製品を組み合わせることにより、お客様の要望への対応や新しい改革の提案、双方を可能とするワンストップソリューションを提供しています。
導入から運用支援までの一貫したサポート
導入から教育、運用支援まで、全域をカバーするサポート体制を構築しています。お客様が安心してDXを推進できるよう、継続的にサポートします。
柔軟な運用環境の提供
アルゴグラフィックスは、3DEXPERIENCE Platformの運用環境として、オンプレミスとクラウドの2種類を提供。さらに、プラットフォーム構築のためのインフラとなるHPEを始めとした各種サーバーによるスターターパックを提供しています。お客様は手軽にサーバー環境を構築でき、運用負荷を大きく削減することが可能です。

3DEXPERIENCE専用クラウド
ダッソー・システムズが提供する3DEXPERIENCE専用のクラウドも提供しており、よりスピーディーに利用開始が可能です。専用クラウドはプロビジョニング、インストール、監視運用、新機能リリースアップへの追従といった作業をダッソー・システムズが対応するため、お客様は本業に集中できます。

おわりに
多品種少量・一品一様の製造業における部品表連携と PPRモデルによる生産準備のフロントローディングなど工程設計のデジタル化は、企業の競争力を左右する重要な経営課題です。アルゴグラフィックスは、お客様のDX推進を強力にサポートし、未来のものづくりに貢献します。
製造現場のデジタル化に関するご相談は、ぜひアルゴグラフィックスまでお気軽にお問い合わせください。
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