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製造業における生成AI活用:課題から具体的な活用事例、基盤の選び方まで徹底解説
アルゴグラフィックス生成AIソリューション × IBM watsonx
近年、AI技術は目覚ましい進化を遂げ、製造業においてもその活用が急速に広がっています。特に、2022年のChatGPTの登場以来、生成AIは設計支援やソフトウェア生成など、従来は困難であった領域での活用が期待されています。しかし、生成AIの導入にはセキュリティやコンプライアンス、ハルシネーション(誤った情報の生成)といった課題も存在します。
本記事では、製造業における生成AIの活用状況、具体的な課題と対策から最適な基盤の選び方について、アルゴグラフィックスが提供する生成AIソリューションおよびIBM watsonx™、IBM Fusion HCIを交えて詳しく解説します。
製造業における生成AIの有効活用でお悩みのご担当者、必見の内容です。
- 製造業におけるAI活用の現状と生成AIの可能性
- 企業における生成AI利用上の課題と対策
- アルゴグラフィックスの生成AI支援実績
- 生成AIによるナレッジ構造化
- 生成AI導入による効果と、具体的なユースケース
- 生成AI基盤の選び方
- 製造業に最適なAI/データプラットフォーム IBM watsonx
- 生成AI活用を支えるIBMインフラストラクチャ IBM Fusion HCI
製造業におけるAI活用の現状と生成AIの可能性
日本の製造業では、2010年代からAIの活用が本格的に始まりました。当初は、画像認識による目視検査の代替や、設備データに基づく故障予測などの「識別タスク」や「予測タスク」が中心でした。2020年以降は、パンデミックの影響もあり、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速。リモートでの監視や操作を可能にするAIシステムの需要が急増しました。
そして、2022年のChatGPTの登場は、AI活用に新たな可能性をもたらしました。CAEモデルの自動生成、各種設計支援、ソフトウェア生成といった「生成タスク」への応用が現実味を帯び、製造業のさらなる効率化に貢献することが期待されています。
企業における生成AI利用上の課題と対策
このように生成AIに対する期待が高まる一方、企業での活用には、いくつかの課題も存在します。
セキュリティ(情報漏えい)
課題:パブリッククラウド型の生成AIを利用する場合、社内の機密情報や個人情報をアップロードすることで、情報漏洩のリスクが高まります。
対策:プライベートクラウドやOSS(オープンソースソフトウェア)によるオンプレミス環境で生成AIを利用することで、情報漏洩のリスクを低減できます。
コンプライアンス
課題:EUでは、生成AIの利用に関してGDPR(一般データ保護規則)との関連性が注目されており、新たなEU AI法による規制も予定されています。
対策:日本ディープラーニング協会(JDLA)が公開している「生成AIの利用ガイドライン」などを参考に、社内ルールを整備することが重要です。
ハルシネーション(誤った情報)の利用
課題:ハルシネーションとは、生成AIが誤った情報や事実とは異なる情報を生成してしまう現象を指します。これは、学習データの問題だけでなく、正確な情報に基づく学習でも発生する可能性があります。
対策:プロンプト(AIへの指示文)を工夫し、抽象的な表現を避け、具体的な指示を与えることが重要です。また、RAG※と呼ばれる技術を用いて、参照するデータを限定することで、ハルシネーションを抑制できます。
※RAGとは:Retrieval Augmented Generation/検索拡張生成。社内に蓄積された各種業務文書や規程標準類および膨大な社外情報を活用する手段として、信頼できるデータを検索し、必要十分な情報を抽出、その内容から大規模言語モデル(LLM、生成AI)に回答させる方法。
アルゴグラフィックスの生成AI支援実績
想定される生成AIの活用事例は、以下の通りです。

ここからは具体的な活用方法として、生成AIのナレッジ構造化(テキストデータ活用)の設計支援についての詳細を解説します。
生成AIによるナレッジ構造化
製造業における生成AIの活用アプローチの一つに、ナレッジの構造化があります。
課題:過去からのナレッジはPDFやWord、PPTなどのファイル形式やSQLなどDBで保管されているもの、音声データをテキスト化したものなど、多種多様な形式で保存されています。これらに対しキーワードを抽出、分類タグ付けなど構造化するには、専門的な知識とセンスとスキル、多大な労力が必要であり、タイムリーな構造化は難しいため、生成AIを活用した解決策を提案します。

解決策:ChatGPTなどの生成AIは、テキスト処理において、要約・翻訳(分かりやすい表現で要約・日本語に翻訳)、情報抽出(ファクトの抽出・特定情報の抽出)、同意判定(2文同意判定)などの能力に優れています。
これらの特性を活かし、生成AIにテキストを与え、処理・判断させることで、効率的なナレッジ構造化が実現できます。この方法では、ハルシネーションのリスクも軽減できます。
具体例:例えば、原文から生成AIを用いて「ファクト(事実)」を抽出し、さらに「原因」「結果」「対象」といった特定の情報を抽出することで、情報を構造化することができます。
応用:生成AIを利用したナレッジ検索システム
アルゴグラフィックスでは、このナレッジ構造化の手法を用いて、「生成AIを利用したナレッジ検索システム」を開発しました。
このシステムでは、「原因」や「発生条件」を質問すると、文書中から関連する「結果」や「影響」を検索し、その結果を要約して回答を得ることができます。また、「結果」を入力することで、可能性のある「原因」を回答することも可能です。
このシステムは、事前のバッチ処理と検索画面で構成されています。事前バッチ処理では、元となるデータの文書をチャンク(小さなまとまり)に分割し、生成AIでファクト(事実)を抽出。抽出したファクトを、ベクトルDBに格納(Embedding)します。検索画面にユーザーが質問を入力すると、生成AIが質問文を英語に変換・加工。BERTによるセマンティック検索により、関連性の高い情報を抽出し、生成AIが回答を生成。検索結果と要約を提示します。

生成AI導入による効果と、具体的なユースケース
生成AIを活用することで、以下の効果が期待できます。
- 特定情報を抽出・構造化しておくことで、より粒度の細かい検索が可能になる
- より関連性の高い情報を得ることができる
- 理解しやすい回答を生成できる
この方法論での生成AI活用の具体的なユースケースを、2つご紹介します。
ユースケース1:生成AIを活用した設計ナレッジ共有ツール
社内の多種多様な非構造データを生成AIが分析して蓄積。さらに有識者やベテランの暗黙知を生成AIがヒアリングして継承する仕組みです。

設計者は、設計アシスタントAIとの対話を通じて、必要な情報を効率的に取得できます。
ユースケース2:不具合原因調査ツール
このツールは、AIが論文や社内の不具合レポートから不具合に関連する知見を探索・収集し、経験の浅い担当者でも熟練者と同様に不具合の原因を特定できるように支援する仕組みです。

ユーザーは、不具合の内容や発生条件を入力することで、AIがナレッジDBから関連情報を収集し、原因仮説の生成をサポートします。
生成AI基盤の選び方
生成AIとそれを支える基盤モデルの登場により、AIの活用は大きな転換点を迎えています。企業がAIから価値を引き出すためには、適切なアプローチが不可欠です。
ビジネスにおけるAIには、以下の3つの要素が求められます。
- ビジネスの文脈やルールを学習したモデルであること
- 既存のビジネスプロセスに組み込みが可能であること
- 高い説明性、公平性、堅牢性、透明性を備えていること
生成AIには、大きく分けて3つのアーキテクチャ・パターンがあります。

- 1.組み込み型: 製品やサービスに生成AIが組み込まれているもの
- 2.API型: 外部の生成AIをAPIとして呼び出して利用するもの
- 3.自社構築AI型: 自社で保有するデータを用いてAIを独自に拡張して利用するもの
企業システムとして生成AIを活用する際には、「3.自社構築AI型」のアーキテクチャ・パターンが最適です。
製造業に最適なAI/データプラットフォーム「IBM watsonx」
IBM watsonxは、クラウドまたはオンプレミス環境に導入できる統合プラットフォームです。ビジネスにおける生成AIの活用を加速させるための、3つのツール群で構成されています。

- watsonx.ai: 基盤モデルや各種AIモデルの活用・構築を支援。業界特化のカスタムモデル開発や、企業データを活用したAI学習をサポート。
- watsonx.governance: AIの透明性、公平性、信頼性を確保し、ライフサイクル全体を通じてツールとプロセスを自動化。GDPRなどの規制対応を支援し、安全なAI運用を実現。
- watsonx.data: 企業の分散データを一元管理し、AIモデルの学習や分析に最適化。データ処理を自動化し、精度向上と運用効率化を実現。オンプレミスやマルチクラウドにも柔軟に対応。
IBM watsonxのツール群を組み合わせることで、企業はAI活用の全プロセスを強化し、業務効率化、競争力向上、コンプライアンス対応を実現できます。
生成AI活用を支えるインフラストラクチャ「IBM Fusion HCI」
生成AI(watsonx)を活用するためには、大規模な計算リソースと安定した運用環境が不可欠です。そのためには、GPUとRed Hat OpenShiftが必要となり、AIモデルのトレーニングや推論を効率的に実行できる基盤が求められます。
IBM Fusion HCIは、オンプレミス環境での生成AI基盤を構築できるソリューションであり、AIワークロードの最適化に特化しています。OpenShiftを活用する際に見落とされがちなストレージ、バックアップ、構築・運用機能をオールインワンで提供し、スムーズなAI運用を支援します。

IBM Fusion HCIのサーバーオプションには、Compute/Storage nodes、GPU nodes、Service node、High speed switches、Management switchesの5つのタイプがあります。

IBM Fusion HCIの新しいGPUノード 9155-G03は、NVIDIA L40S 48GB を最大32枚まで搭載可能。NVIDIA H100 NVL 94GB もサポートしています。GPUは検証済みのため、導入してすぐに使用できます。

製造業の生成AI活用ならアルゴグラフィックスへ
いかがでしょうか。このコラムでは、製造業における生成AIの活用について、その可能性と具体的な導入方法を詳しく解説してきました。
生成AIは、設計支援やソフトウェア生成といった、これまでにない領域での活用が期待される一方で、セキュリティやコンプライアンス、ハルシネーションなどの課題も抱えています 。しかし、これらの課題に対する対策を講じることで、生成AIは製造業の効率化に大きく貢献する可能性を秘めています 。
アルゴグラフィックスは1985年の創立からIBM製品の取り扱いを開始し、約40年にわたる協業関係を築いてきました。強力なパートナーシップのもと、自動車メーカー・サプライヤー、半導体メーカーなどの製造業、大学・研究機関などのお客様に豊富な導入実績があります。
また、データセンターGPUのコンピテンシーにおいて、最高ランクのNVIDIA Compute Eliteパートナーに認定されています。
製造業での生成AI活用、IBM watsonxの導入、マルチクラウドからオンプレミス対応をご検討中であれば、ぜひアルゴグラフィックスにお気軽にご相談ください。
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